横浜ビレッジ - E Hama Club
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横浜ビレッジ

女将さんが最も大切にしていることは、「お客様とのふれあい」であるそうです。「料理も、店内の内装や調度品も、もちろんお客様をお迎えするうえで重要です。しかし、商売はお客様あってのものですから、お客様にいかに満足していただけるか、喜んでいただけるかが最も重要なのです。それには、お客様とのふれあいを大切にし、“目配り”、“気配り”、“心配り”をさりげなく感じていただけるようにしなければなりません」。
さらに、「言葉で綺麗なことはいくらでも言えます。しかし、いいものはいいし、美味しいものは美味しい。余計な言葉はいらないんです。一生懸命やっていれば、それは自然と通じます。お客様への感謝が常に心の中にあれば、それは言葉で飾らなくても伝わっていきます」と、真剣な目で語ってくださいました。
そんな女将さんは毎日、客が今日は何を求めて来ているのかをなるべく早くキャッチすることを心がけて店に立っているそうです。

こうしたこだわりを持ち続ける女将さんにとって最も嬉しいのは、「旅行に行かれたお客様が、『これを召し上がって』とお土産を買ってきてくださったときですね」とのこと。「客」と「経営者」という垣根が取り払われた瞬間を実感することができ、このうえなく嬉しい気持ちになるそうです。「お土産を買ってきてくださるということは、私の存在が旅先でもその方の心の中にあるってことですよね。私にとって、それはかけがえのない財産です」。

 

「ささ田」の魅力は、伝統と格式が感じられる店構え、現代的で洗練された雰囲気の店内、家庭的でぬくもりのある料理とおもてなし、の3つが醸し出す「意外性」です。一見ミスマッチと思えるこれら3つの要素が「遊」(すなわち、遊び)というコンセプトによって一体化し、「ささ田」ならではの世界が創り上げられています。
「外から見ると敷居が高い店なのに、中に入ってみると現代的で家庭的。そのギャップを楽しんでいただきたいと思っています。そのためには、私たちが常に『遊び心』を持ってお客様に接することが大切です。遊び心を持って、伝統とか古来のしきたりというものを少し崩してみたら面白いのではないでしょうか。ですから、お出しする料理も、伝統的な『懐石料理』を敢えて少し崩しています」と、女将さんはおっしゃいます。
店名の上に掲げられている「遊膳」という言葉には、「うちは遊び心を持った料理屋ですよ」という意味が込められているそうです。また、用意されているコースにも、「すごろく」や「かくれんぼ」など、昔懐かしい遊びの名前がつけられています。

◆「ささ田」は「遊膳」というコンセプトのとおり、内外装や調度品ばかりでなく料理や接客サービスにも「遊び心」がスパイスとして効いており、重厚な外観とは異なって非常に和やかで、癒されるお店でした。また、女将さんのお人柄も「ささ田」の大きな魅力の1つです。接客というものに対する確固とした信念を持ち、プロフェッショナルとしての厳しさを備えながらも、ソフトで温かく、私たちに対して母親のような接し方をしてくださる女将さんに、私は強い感銘を受けました。
現在、私は一人暮らしをしていますが、今回の取材をとおして女将さんと知りあうことができ、横浜に第二の母親ができたような気持ちです。またぜひ、お店にお伺いしたいと思います。
(横濱まちづくり倶楽部会員・杉山 卓)

◆「ささ田」のお店は歴史ある建物で、伝統と格式の感じられる外観でありながら、店の中はアットホームな雰囲気です。その意外性が大きな魅力なのですが、それはこの店で出される料理にも共通しています。見た目は綺麗で、かしこまったイメージなのに、口に運ぶと優しい味で、心がホッとするようなぬくもりのある料理でした。
また、そもそもコースの献立自体にも驚かされました。伝統的な懐石料理を基本として組み立てられたコースの中に突然、家庭料理の代表ともいえるコロッケが現れるのです。これは女将さんによる「遊び心」の演出なのですが、私はそれに深く感心しました。究極のところ、人の心を癒す料理は、ほとんどの人が毎日のように食べてきた「お袋の味」なのではないでしょうか。それを、コースの中にそっとしのばせる心配りには脱帽です。
私にとって「ささ田」は、疲れた心を癒したいときに親しい友人を誘って行く店として、最初に名前の浮かんでくるお店になりました。
(同・田代 瞬)

料理やおもてなし、女将さんのお人柄にも強く心が惹かれましたが、私は「ささ田」のお店自体に目を奪われてしまいました。日本の建築史においても貴重であるというお店は、門構えも、建物の外観も、そして部屋の中のつくりも、「素晴らしい」の一言に尽きます。
また、そうした伝統家屋の使い方のうまさにも感銘を受けました。玄関や、玄関を入ってすぐの部屋は昔ながらの雰囲気をそのまま残してあります。しかし、メインのゲスト・ルームは大きなガラス窓に囲まれた開放的でモダンな空間に仕立てられており、そこに洗練されたデザインのテーブルと椅子。そして、アクセントとして置かれている古民具。こうしたメリハリのあるコントラストには、驚きを超えて感動を覚えます。
また、この部屋から見渡せる庭園も見事です。しっかりと手入れがされており、四季折々で違う表情を見せる美しい花々や木々をめでながら食事を楽しめるようになっています。そして、夜はこの庭にかがり火が灯され、都会の夜景とは異なる幻想的な景色がガラス窓越しに広がります。
古い建物を単に維持するだけではなく、それをうまく活かして、さらに魅力を高めていく。その精神、そしてそれを具現化する手法の一例を学ぶことができ、大変勉強になりました。
(同・山田雅浩)