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横浜・食の極人 vol.11 横浜の味を創る究極の達人たち

フランス料理「スターライトグリル」

それぞれのお店には、そのお店の味を生み出す究極の達人がいます。このコーナーでは、そうした人びとに直撃インタビューをして、その素顔に迫っていきたいと思います。
11回目の今回は、横浜・元町のフランス料理店「スターライトグリル」の店長、中丸大輔さんです。

食の極人・プロファイル11        「スターライトグリル」店長 中丸 大輔さん

写真1 スターライトグリルの店長である中丸大輔さんは昭和44年、鎌倉でお生まれになりました。ご実家が酒屋さんであったため、幼い頃から御祖母さまと一緒に店番をし、店に来たお客さんたちとよく触れあっていたそうです。また、小学生の頃は毎日のように野球をしたり、自宅近くの海へ魚釣りに行ったりと、非常に活発な少年でした。
その後、地元の高校に入学されましたが、そこでは「上下関係の厳しさを学びました」とおっしゃいます。子供の頃から食べることがとても好きであったそうですが、次第に料理への関心が高まっていき、高校卒業後は横浜調理師専門学校へ進学。そこで研鑽を積まれました。
その時に非常に影響を受けた先生がいらしたそうで、「いつかこういう人になりたいと思っていました。その頃にはもう、料理人として生きていこうと決めていました」。
専門学校卒業後は、鎌倉の由比ヶ浜にあるホテルのキッチンで4年ほど働いていたそうです。その折に、横浜・元町のジュエリー・ショップ「スタージュエリー」の社長である永井淳二さんとの出会いがありました。
「古き良き横浜・元町の洋食の復活」をコンセプトとして飲食業への進出を考えていた永井さんは、「店長としてゼロから頑張ってみないか」と中丸さんを誘います。中丸さんはその誘いを受け、このプロジェクトに企画段階から参加したそうです。そして、さまざまな苦労を乗り越え、2004年12月10日、ついにスターライトグリルをオープンさせました。
スターライトグリルは、趣向を凝らしたオリジナル料理や、おしゃれでカジュアルなインテリア、訪れた人びとのニーズにあわせた素敵な演出によって、開店して間もないにもかかわらず多くのファンの心を捕らえています。

「小さい頃から、人と接することが日常茶飯事となっていました。」
中丸さんのご実家は酒屋さんで、「いつも家の店番を祖母と一緒にしていましてね。小さい頃からお客さんと話したりするのが好きでしたよ」。ほぼ毎日のように、さまざまなお客さんたちと関わっていたそうです。
そのような環境の中で育ったこともあって、「自分に一番向いている仕事は何だろうと考えているうちに、自然と人と接する仕事を選んでいました」と、中丸さんはおっしゃいます。また、ご実家は海が近かったため、海が大好きでいらしたそうで、「よく海で釣ってきた魚を自分で料理して祖父や祖母に食べさせてあげました。すごく喜んでくれましてね」と、当時の思い出を語ってくださいました。

「色々な人に来ていただき、色々な人にスターライトグリルを実感していただきたい。そして、色々な意見を伺いたいですね。」

写真_2店長である中丸さんは、お客さんからのクレームを受けることが結構あるそうです。しかし、「私たちはクレームと捉えずに、お客様からのアドバイスというかたちで受け止めさせていただいています」とおっしゃいます。
「店に関してでも、料理に関してでも、お客様が何か不満に思われていることを言えないで帰られるのではなく、フレンドリーな感じで、気兼ねなく言っていただけるようにしたいのです。そのほうが、店のこれからにとって大切です」。中丸さんは、不満に感じたことなどをお客さんが言いやすい雰囲気をつくることも、スタッフ側の重要な役目であると心がけているそうです。
スターライトグリルでは、最低限の接客用語以外のマニュアルをつくっていません。接客スタッフは若い人たちが多いのですが、マニュアルで縛りつけて若い人たちの可能性を潰してしまうのではなく、一人ひとりが自分のよさを充分に発揮し、自由に接客することを重視しているそうです。
「言葉は丁寧だけれども心がこもっていないというのではなく、自分自身の言葉でいいから、精一杯のありがとうという気持ちや、また来てねっていう心からのメッセージをお客様に伝えてくれるよう、スタッフに言っています。そうすると、自然とマニュアルにはない笑顔が出るんですよね。お客様も私たちも人間なので、感情的なものがいいかたちで相手に伝わると嬉しいんです。スターライトグリルが好きで来てくださる人であれば、小さい子供であろうが、どんな人であろうが『最大のウェルカム』でお迎えしています」と、中丸さんはおっしゃいます。

「店にはさまざまなお客様の人間模様、喜怒哀楽が詰まっているんですよ。」

「店長をされていて楽しいことは?」と伺ったところ、「オープンしてまだ1年も経っていませんが、これまでに色々なドラマがありました。お客様にとって大事な日に使っていただくことが多いのですが、彼女の誕生日に来てくださったカップルにホールケーキをお出ししたら、女性が感激して泣き出したこともありましたよ。せっかく私たちのレストランを使っていただいたのに喧嘩してしまった人たち、そしてまた仲直りした人たちもいます。店には、そんなお客様の色々なドラマが詰まっているのです。そういうのって、見ていて感動しますよね」。
さらに、「食べに来てくださったお客様にも、働いているスタッフにも、スターライトグリルにいた時間を無駄だと思ってほしくない。この店と関わってよかったと思ってもらえるようにしたい。それが私の幸せでもあります」と、中丸さんは続けてくださいました。
お客さんはもちろん、働いているスタッフとも喜びや哀しみを分かちあうことが、よい店づくりの基本であると考えている中丸さん。その姿勢がスタッフに伝わって、お客さんの満足のために精一杯の演出をしようという行動が生まれ、それがまた新たな評判につながる。開店して1年弱しか経っていませんが、スターライトグリルにはすでにそんな好循環ができつつあります。

「料理については、できるだけ素材を活かすということを心がけています。」

写真_3 現代の飲食業は、むしろ「空間のプロデュース業」であるとよくいわれます。しかし、客を満足させる料理が大前提であることにはまったく変わりがありません。
スターライトグリルの料理は、フランス大使館から最高名誉認定証(「エスコフィエ」)を受けるなど、洋食界のカリスマ・シェフであった矢島政次さん(故人)のレシピに基づいたもので、開店当初より高く評価されています。
そこで、中丸さんに料理に対するこだわりを伺ってみると、「フランス料理には非常に手が込んでいるとか、きっちり作っているというイメージがあります。しかし実は、意外と手を加えていないところもあり、素材を活かす料理なのです。だから、素材は大切ですよね」と、答えてくださいました。
素材は毎日、その日の最もよいものを仕入れることができるよう、努力と工夫を重ねています。さらに野菜などに関しては、八百屋さんから農家の方を紹介してもらい、直接交渉して新鮮なものを調達することもあるそうです。「お客様が安心して食べることができるものをお出しするために、常に細かいところにまで気を配っています」と、中丸さんはおっしゃいます。
もちろん、シェフの腕前も重要で、これには非常に自信を持っているということです。特に料理長は技術が優れているばかりでなく、あまりかたちにとらわれず、発想力の豊かな方であるそうです。
また、新しいメニューの開発は、お客さんの意見を積極的に取り入れながら、多くのスタッフを巻き込んだ試食会を重ねて進めています。そして、「あの店でなければ食べられない」というようなオンリーワン料理を、スタッフの総力をあげて開発しているそうです。

「やはり、人間関係の基本は信頼関係です。ですから、これからもずっとそこに重点をおいて頑張っていきます。」
写真4

スターライトグリルは、ジュエリーの企画・製作・販売を本業とするスタージュエリーが初めて展開した飲食店です。それだけに、「会社自体にはまったく飲食店の経営ノウハウがありませんでしたし、もちろん前例も失敗例もありません。すべてがゼロからのスタートで、どうしたらお客様が喜んでくださるのかを把握し、それをスタッフ全員に伝えていくのが大変でした」。
中丸さん自身も、店長という立場で店を任されるのは初めての経験であったため、最初は非常に気張ってしまったそうです。「結局、私が気張っていることが、よくないかたちでアルバイトの人たちに影響していたようです。私が肩の力を抜いて楽にやろうよっていう感じになってから、アルバイトの人たちも心を開いてくれるようになりました」。
リーダーである中丸さんの気持ちのゆとりがスタッフとの間に信頼関係を育み、チームワークが整っていきました。まずはスタッフの心が通いあうことが大切であり、そのステップをしっかりと踏んでこそ「今では、店の中にアットホームな雰囲気が生まれ、それがお客様にも伝わってよい結果が出ています」という方向へ進めるのでしょう。
こうした実体験をふまえて、中丸さんは「あの人がすごいとか、この人がすごいとか言われるのではなく、1つのチームとして、あのお店はすごいと言われるようにならなければ、みんながこの店にいる意味はないんだという話をいつもしています」ということです。
そして、「どんなにいいお店であっても、どんなに経営力があっても、その店に関わっている人間の“根っこの部分”ががっちりとしていないとだめだと思います。売上などの数字的なことももちろん大事ですが、信頼関係こそが一番の財産です。私は、人と人の間をつなぐハートを、これからも何より大切にしていきたい」と、店長としての抱負を熱く語ってくださいました。




インタビューを終えて

■私は今回の取材で、料理へのこだわりはもちろんのことですが、開店したばかりのスターライトグリルを店長として引っ張っていく中丸さんのプロフェッショナルとしての姿勢に深く感銘を受けました。特に、「人間関係の基本は信頼関係である」という深い言葉や、「客にもスタッフにも、スターライトグリルと関わってよかったと思ってもらえるようにしたい」という抱負に、プロフェッショナルの力強い信念を感じました。
また、客のクレームを店の将来のためのアドバイスと捉え、「不満に感じたことを客が言いやすい雰囲気をつくることも、スタッフの大切な役目」であるという中丸さんの主張も、非常に重要であると思います。こうした謙虚な姿勢がなければ客のニーズを捉えた店づくりはできず、競争が激しい飲食業界では生き残っていけないのではないでしょうか。
ところで中丸さん、次は取材ではなくて、彼女に勝負をかけるときにぜひ利用させていただきます!
(横濱まちづくり倶楽部会員・杉山 卓)

■今回はスターライトグリルの店長である中丸さんを取材させていただきましたが、その取材の中で、人と人とでつくりあげていく人間関係こそがすべての基礎であるということを改めて痛感させられました。スターライトグリルを訪れたときに感じられるアットホームな雰囲気は、中丸さんとアルバイトの方々、あるいはスタッフの方々同士の間に強い信頼関係があることから醸し出されているのでしょう。きっと、それが自ずと私たちに伝わってきているのだと思います。
信頼関係をつくるというのは言葉で言うことはたやすいのですが、実践するのはとても大変です。しかし、店の立ち上げという苦難に立ち向かった中丸さんだからこそ信頼関係の本当の意味を理解することができ、人と人とのつながりが一番の財産であると心から感じ取ることができたから実践に移せたのでしょう。
これからも、皆さんのパワーが結集した素敵な料理や演出を楽しみにしています。
(同・望月裕也)

■スターライトグリルの料理は、見た目ばかりを重視するようなフランス料理とは違って、素材を活かし、素材の味を損ねないように配慮されています。そしてもちろん、視覚でも楽しめるものに仕上げられています。
また、中丸さんへのインタビューからわかったのですが、素材自体に対するこだわりを貫くために、客からは見えないところでも努力と工夫が重ねられています。例えば、何軒かの店をまわって最もよいものを仕入れるとか、農家を紹介してもらって直接交渉し、新鮮な食材を調達するといった努力を継続していることには頭が下がります。さらに、メニューの中にある「本日の前菜」や「本日の魚料理」については、その日の最もよい素材を選んで使い、その状態にあった調理をして提供しているということであり、料理スタッフの方々のひたむきさに感銘を受けます。
よい素材を仕入れ、その素材を活かした料理を考え出すということは当たり前のことなのかもしれませんが、それを継続することは難しいものです。これからもそうした基本を貫き、私たちの舌を楽しませてください。
(横浜商科大学学生・田代 瞬)

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