トップページ サイトマップ お問い合わせ イメージ1 イメージ2 イメージ3
まちづくり倶楽部とは spacer.gif 倶楽部からのメッセージ spacer.gif まちを歩けば・・・ spacer.gif 横濱の食案内 spacer.gif リレー式コラム spacer.gif リンク集
濱通講座 menu_3_line.gif ヨコハマスタイル menu_3_line.gif 交流会 menu_3_line.gif 中心市街地活性化研究会
まちを歩けば・・・
バックナンバーへ
横浜・食の極人 vol.10 横浜の味を創る究極の達人たち

居酒屋 「元町 久佑」

それぞれのお店には、そのお店の味を生み出す究極の達人がいます。このコーナーでは、そうした人びとに直撃インタビューをして、その素顔に迫っていきたいと思います。
10回目の今回は、横浜・元町の居酒屋「久佑」の店主、坪崎久子さんです。

食の極人・プロファイル10        「久佑」店主 坪崎 久子さん

写真1 久佑(きゅうすけ)の店主である坪崎久子さんは、地元生まれの地元育ち。お店のすぐ近くにある女子校に通われていたそうですが、そのころから料理が大好きだったということです。
しかし、実は料理だけでなく、洋服のデザインにも大変関心があり、進学されたのはデザイン学校でした。そして卒業後は、さまざまなお稽古ごとやアルバイトをしていたそうです。
そんな折、明治の中頃から続く老舗「愛知屋」の4代目であるご主人様と出会い、38年前に嫁がれました。しかし当時は、それまでに会社勤めをした経験がまったくなかったため、「自分に酒屋での仕事ができるのかな?果たして面白い仕事なのかな?」と思っていたそうです。
ご結婚後は料理への興味が次第に高まり、料理学校に通うようになりました。そして、その経験を活かし、お店で弁当の販売を始めたそうです。そのうちにお客さんのほうから「お店でゆっくりと食べられるようにしてよ」という声があがってきたのがきっかけとなって、「久佑」を開店したということです。
「好きこそものの上手なれ」といいますが、料理好きの坪崎さんが始められた久佑は、今やハマの食通たちの舌を唸らせるまでの店になりました。10席ほどの小さなお店ですが、隠れ家的な落ち着いた雰囲気の中で、昔ながらのお袋の味を存分に楽しめる店として、多くのファンを惹きつけています。

写真2

「とにかく昔から料理が好きだったんです。」
坪崎さんのご実家は材木屋さんで、木くずを薪にし、かまどの燃料として使っていたそうです。長女だったので家族の料理を作る手伝いをよくしており、「私は小学生のころから薪でご飯を炊けたんですよ」とおっしゃいます。
そうした環境の中で育ったこともあり、幼いころから自然と料理への興味が湧いていきました。「危ないからといって両親が作らせてくれなかった天ぷらを留守の間に作って怒られたり、両親が家を空けるときに置いていったレシピとは全然違う料理を作ったりしていました」と、当時の思い出を語ってくださいました。子供のころから相当、料理を作ることがお好きだったようです。

「お弁当を売ろうと思ったのが始まりでした。」
今の久佑があるスペースは、もともと愛知屋の倉庫でした。しかし、店舗を改装するときに、「ちらしずしなどのお弁当を作って、お客様に売ることができるようにしたい」と思い、現在のようなかたちにしたということです。
すると、お客さんから「ここでお弁当を食べて、そのまま元町へ買い物に行けるようにしてほしい」という声があがってきました。そこで、ランチを手がけるようになり、その時に「お弁当だけでは…」ということで、今や店の名物となったカレーうどんのアイデアが思い浮かんだそうです。
「考えるのは大変だけれど、それによって新しいオリジナリティが生まれてくるので楽しいです」と、坪崎さんはおっしゃいます。

「次男が地酒をもっと広めたいっていうので、久佑を開く決心をしました。」

写真3 「居酒屋・久佑」を開店し、本格的に飲食業に取り組むようになった理由を坪崎さんにうかがったところ、「もともと料理好きであったということもありますが、日本の地酒をもっと広めていきたいという想いもあったんです」と、答えてくださいました。
利き酒師である次男の満さんには、以前から「自分の勧めている地酒をここで飲んでもらえるようにしたい」という願いがあったそうです。それを実現させたいという気持ちはありましたが、「そのときもう50代の半ばでしたから、そんなお店を開けるかどうか心配でした」。
多くの不安がありましたが、さまざまな人たちの応援があって無事に開店でき、今日にまで至ることができたということです。「でも、お店を開いたことによって元気や根性が湧いてきたし、やってみて初めてこの仕事が性にあっていると気づかされました」と、明るい笑顔で語ってくださいました。

「自然なもので、自分たちが食べても安心できるものだけをお出ししています。」
「料理はお客様向けに作るものとしてではなく、自分たちの口にも入るものと考えて作っています。ですから、自分たちが安心して食べることのできるものだけをお出ししています」ということです。この言葉どおり、たとえば塩ひとつにしても天然塩にこだわるなど、自然な素材で体にもよいものや添加物が使用されていないものだけを用いることを、これまで貫いてきました。それが坪崎さんの誇りであるようです。
息子さんたちも昔からとても健康で、丈夫であったそうですが、それは小さいころから一家の料理長である坪崎さんの手料理を食べて育ったからかもしれません。その家庭料理が、久佑ではそのままメニューとなっています。
もともと料理好きで、幼いころから家族のための食事を作り続けてきた坪崎さんにとって、こうしたことは「こだわり」というよりも、「当然のこと」なのでしょう。「これまでいろいろな趣味に打ち込んだり、習いごとやお稽古をしたり、酒屋を手伝いながら主婦もやりましたが、自分の料理をお客様に出せるこの商売が一番楽しいわね」と、坪崎さんはおっしゃいます。

「お客様とのコミュニケーションの中で、いろんなことがわかるようになり、だんだん親しくなっていけるのが嬉しいんです。」
写真4

「愛知屋でお酒を買ってもらうというだけの関係では、お客様がどういう人なのか、どこのどなたなのかもあまりわかりません。けれども久佑があるから、お客様といろいろなコミュニケーションがとれるし、それによってお客様のことがだんだんとわかるようになっていきます」という坪崎さん。また、「お客様だって、お店のことをもっと知りたい、お店の人ともっと親しくなりたいという気持ちが起こらなければ、再び足を運ぼうとは思わないでしょう。通いつめていただくうちに、次第に仲よくなっていけることが嬉しい」とおっしゃいます。
一方、料理はお酒にあったものを常にあれこれと考えながら作っているそうです。そして、「満足して帰っていただけたか」、「お酒は口にあったか」、「季節を感じながら味わっていただけたか」といったことに最も気を配っているということです。
ところで、久佑のカウンターは低めにつくられています。そのため、客席からでも調理場が見え、客と調理場に立つ人との目線が同じ高さになっているので圧迫感がありません。「お客様も、料理を作っている手元が見えるから安心だと言ってくださいます。ときには、自分たちのまかないを作っているのを見たお客様が召しあがりたいと言われるので、少しおすそ分けしてあげたりすることもあるんですよ」。
そうしたアットホームな雰囲気こそが久佑の魅力であり、それに惹かれて多くのファンが足繁く通うようになるのでしょう。

「もっともっと、日本の美味しい地酒を広めていきたいんです。」
「食材に対しては絶対に妥協したくない」、「日本にはまだまだ美味しいお酒がいっぱいあるので、そういう地酒をもっと広めていきたい」という坪崎さん。「個性のあるお酒にこだわっていきますので、ぜひ一度お越しください。これからも美味しいお酒とお袋の味をずっとお出ししていきます」と抱負を語ってくださいました。
久佑のお酒に対するこだわり、坪崎さんが作り出す「おふくろの味」、隠れ家的なお店の雰囲気に惹かれ、遠方から来るお客さんもいるそうです。坪崎さんの客に対する細やかな気配りや、お酒と料理へのこだわりがあってこその評判なのだと思います。
一方、久佑に隣接する愛知屋のほうでは、午後5時半になるとカウンターバー「バール愛知屋」がオープンします。ワン・コインで気軽に飲めますので、自分の好みにぴったりあったお酒を探すことができます。お酒の新たな魅力と出会うために、ぜひ一度足を運ばれてみてはいかがでしょうか。




インタビューを終えて

■私は今回の取材で、「居酒屋・久佑」の家庭的な暖かさにとても魅力を感じました。その「暖かさ」は、こじんまりとした店内の雰囲気ばかりでなく、坪崎さんの私たちに対する母親のような接し方から醸し出されています。しかし、それは決して「演出された暖かさ」ではありません。私たちに「演出されている」と感じさせないところに、逆に坪崎さんのプロとしての力量を感じました。
気配りの行き届いたもてなし、美味しいお酒と料理を楽しませていただいていると、時間が経つのがとても速く、「お酒はやはり、よい雰囲気の中で飲むのが一番うまい!」ということをあらためて感じます。そんな久佑だからこそ、飲食店の競争が激しい元町の中でも、食通の人たちから長く愛され続けているのではないでしょうか。
(横濱まちづくり倶楽部会員・杉山 卓)

■おしゃれで「大人の街」である元町の一角に、隠れ家的にたたずむ久佑は、まさに「大人の店」。私は飲食店の経営に関心があり、現在、大学でそれを研究していますが、そんな私にとって学ぶべきことがたくさんあるお店でした。
特に感銘を受けたのは、お客さんに対する細やかな気配りです。例えば、客と調理場に立つ人との目線の高さを同じにしたというお話は非常に印象に残りました。言われてみなければ気づかないことですが、たしかにこれによって、店の人とコミュニケーションを楽しみながらゆったりと飲むという雰囲気づくりができています。
客と一緒に自分も楽しめる店をつくる――これは非常に難しいことですが、飲食店の理想なのではないでしょうか。それを実現しようとする坪崎さんのひたむきな姿勢や努力には頭が下がるばかりです。
(同・望月裕也)

■私が今回の取材を通じて特に感動したことは、坪崎さんの母親のような暖かさでした。取材慣れしていない私たちには至らない点が多かったと思いますが、坪崎さんは優しい笑顔で、丁寧に対応してくださいました。
もちろん、お酒や料理も最高でした。なかでも料理に関しては、メインになるような料理ばかりでなく、脇役的な料理にも細やかな技と工夫が凝らされています。個人的には「久佑玉子」が特に印象的で、私に玉子の新たな魅力を発見させてくれた料理でした。
坪崎さんにとっての料理は、きっと自分の誇りなのではないでしょうか。そんな印象を受けるほど、一つひとつに心が込められています。これからも、こうした真心を感じさせるような料理を作り続けていただきたいと思います。
(横浜商科大学学生・勝又勇人)

spacer.gif
back
spacer.gif
コピーライト
横濱まちづくり倶楽部